ダンベルを戻す高さが毎回違う人は、なぜ月次の固定費も揃わないのか
ジムで長年観察していると、興味深い相関が見えてきます。ダンベルをラックに戻す位置が毎回10cmずつずれる人は、月次の固定費の管理もどこか揃わない傾向があるのです。偶然のように見えて、実は同じ思考の癖が根にあると私は考えています。今回はこの「戻す場所を決められない癖」が、半年後のPL精度にどう跳ね返るのかを、経営者の視点から分解してみたいと思います。
「戻す位置」を決めていない人は、判断コストを毎回払っている
ダンベルラックには本来、重量ごとの定位置があります。10kgは10kgの場所、15kgは15kgの場所へ戻す。ところが実際の現場では、その日の気分や近くの空きスペースに任せて戻す人が少なくありません。
一見些細な行動ですが、これは「毎回、置き場所を判断している」ことを意味します。決めていないから、その都度考える。考えるから、微妙にズレる。ズレるから、次の人も探すのに時間がかかる。
私が指導現場で観察してきた限り、この癖を持つ方は、日常の他の意思決定でも「都度考える」パターンに陥りやすい傾向がありました。
固定費が揃わない経営者の思考構造
これを経営に置き換えてみます。月次の固定費──家賃、ツールのサブスク、外注費、通信費──これらは本来「戻す位置」が決まっているはずの数字です。ところが、毎月微妙に金額が揺れる経営者は少なくありません。
ツール契約が増減する、外注の範囲が曖昧、経費計上のタイミングがずれる。個々の理由はあるのですが、共通しているのは「固定費の定位置を決めていない」という一点です。
決めていないから、毎月判断が発生する。判断が発生するから、記録もぶれる。半年後、PLを見たときに「なぜこの月だけ跳ねているのか」を説明できなくなるのです。
半年後のPL精度は、今月の「戻す場所」で決まる
PLの精度とは、突き詰めれば「予測と実績のズレの小ささ」です。予測が立てられるのは、変数が固定されているからに他なりません。
ダンベルの定位置を決めた人は、次回のトレーニング動線を最短化できます。同じように、固定費の定位置──いくらを、何に、いつ払うか──を決めた経営者は、翌月以降のキャッシュフローを高精度で予測できるようになります。
逆に言えば、今月「まあこのくらいで」と曖昧に処理した10cmの誤差が、半年積み重なると60cmになる。PL上では、その60cmが「なぜか合わない数万円」として現れるのです。
戻す場所を決める、というのは単なる整理整頓の話ではなく、判断を先送りしない思考習慣そのものです。あなたの今月の固定費は、去年の同月と何円ずれているでしょうか。その差額を説明できるかどうかが、半年後のPL精度を決めていくのだと私は考えています。より具体的な固定費の「定位置化」の設計手順は、noteの深掘り記事で扱う予定です。