「次のセットは何ですか」と聞く部下と、経営者の共通構造
パーソナルトレーナー時代、最も印象に残っているのは「次は何をすればいいですか」と毎セット聞いてくるクライアントの存在でした。指導現場では珍しくない光景です。そして経営の現場に身を置いた今、同じ構造の発言を社内で頻繁に耳にします。指示待ちはなぜ生まれるのか。その答えは、トレーニング理論の中に意外なほど明確に存在していると考えています。
メニューを組めないトレーニーに共通する一点
長年指導してきて気づいたことがあります。自分でメニューを組めない人は、運動経験や筋力の有無とは関係なく、ある共通点を持っています。それは「目的から逆算する習慣がない」という一点です。
胸を厚くしたいのか、姿勢を改善したいのか、体脂肪を落としたいのか。目的が解像度高く設定されていれば、種目選択も重量設定もレップ数も、論理的に導き出せるはずです。逆に言えば、目的が曖昧なまま「とりあえずジムに来ている」状態では、次のセットを自分で決めることは原理的に不可能だと考えられます。
指示待ち部下に欠けているのも同じ変数
「次に何をすればいいか分からない」と言う部下を観察すると、能力が低いというより、自分の業務の上位目的が見えていないケースが大半です。何のためにこの作業をしているのか、この四半期で何を達成すべきなのか、その変数が空欄のまま日々のタスクをこなしている。
これは部下個人の問題というより、目的を共有しきれていない組織側の構造的課題でもあります。トレーナーがクライアントのゴールをヒアリングせずにメニューを渡しているのと、本質的には同じ状況だと言えるでしょう。
では、経営者自身はどうか
ここからが本題です。私自身、建設業界で AI を使った事業を立ち上げる過程で、何度も自問してきました。自分は本当に「次のセット」を自分で組めているのか、と。
コンサルタントの言葉、SNS で流れてくる成功事例、誰かのロードマップ。それらを参照すること自体は悪くありません。しかし、参照しているうちに、いつの間にか「次に何をすればいいか教えてほしい」という姿勢になっていないか。指示待ち部下を生んでいる構造と、経営者が陥る構造は、驚くほど相似形を成していると感じています。
自分の事業のゴールを、解像度高く言語化できているか。そこから逆算した「今日のセット」を自分で設計できているか。この問いから逃げない人だけが、最終的に組織にも同じ思考を伝播させられるのだと考えています。
あなたは今、自分の事業の「次のセット」を、自分で組めているでしょうか。それとも、誰かに決めてもらおうとしていないでしょうか。目的から逆算する思考の具体的な手順については、note の深掘り記事でさらに整理しています。よろしければ、そちらもご覧ください。