「もう1種目やるか」の30秒が、半年後の撤退判断力を鍛えている
ジムでメニューを終えた後、「もう1種目やっておくか」と迷う30秒があります。多くの人は気分で決めますが、この小さな判断の積み重ねが、実は事業の撤退判断力そのものを形作っていると私は考えています。感覚論ではなく、判断の構造として説明してみます。
「やる/やめる」を気分で決める人は、事業でも同じ決め方をする
パーソナルトレーナーとして現場を見てきた経験では、追加種目を「なんとなくやる」「なんとなくやめる」で決める人は、翌週の再現性がありません。今日は疲れているからやめる、今日は調子がいいからやる。基準が気分に紐づいているため、行動が安定しないのです。
これは事業判断でも同じ構造で起こります。売上が伸び悩んでいる新規事業を「もう少し粘るか」「畳むか」と迷うとき、明確な基準を持たない経営者は、その日の気分や直近の小さな成功体験に引きずられます。結果として、撤退すべきものを続け、続けるべきものを畳んでしまう。
身体の判断基準は、数値と主観の両方で持つ
私が指導現場で提案していたのは、追加種目を判断する基準を事前に決めておくことでした。たとえば「フォームが崩れない範囲でもう1セット」「主観的疲労度が7/10を超えたら終了」といった、客観指標と主観指標のハイブリッドです。
重要なのは、判断を「その場の30秒」に委ねないこと。基準はトレーニング開始前、あるいは前日に決めておく。汗をかいて判断力が落ちている状態で正しく決めるのは、想像以上に難しいのです。
これは事業の撤退ラインとまったく同じ設計だと考えられます。撤退基準は、事業が苦しくなってから決めるものではなく、始める前に決めておくもの。KPI未達が3ヶ月続いたら、月次赤字が◯円を超えたら、といった数値と、「自分がこの事業を語るときに熱が戻らなくなったら」という主観の両方を持っておく。
撤退できる人は、日常の小さな判断で練習している
興味深いのは、事業で潔く撤退できる経営者ほど、日常の小さな判断でも基準を持って動いているという傾向です。逆に、大きな判断だけ論理的にやろうとする人は、うまくいきません。判断力は筋力と似ていて、日々使わなければ鈍っていくものだからです。
ジムでの30秒の逡巡は、判断の反復練習として機能しています。基準を持って「今日はやる」「今日はやめる」を毎回きちんと決める人は、半年後、事業の撤退判断でも同じ精度で動けるようになっている、と私は観察しています。
あなたは今日、ジムで(あるいは仕事終わりの一杯で)「もう少しやるか」を何を基準に決めましたか。その基準の解像度が、次の事業判断の解像度になります。撤退基準の設計について、より具体的な話は note の深掘り記事で扱っています。