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売上ではなく「意思決定スピードの低下」を測るべき理由

売上ではなく「意思決定スピードの低下」を測るべき理由

ウェイトトレーニングの現場で長年観察してきた事実があります。怪我をするトレーニーの多くは、限界重量に挑んだ瞬間ではなく、セット後半に「挙上速度がわずかに落ちた」一回を見過ごしたときに故障します。重量も回数も同じ、しかしバーの初速だけが落ちている。この微細な変化を計測しているかどうかが、長期的なパフォーマンスを分けます。経営においても、構造は驚くほど似ていると考えられます。

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速度低下は「限界」より先に現れる

近年のストレングストレーニングでは、VBT(Velocity Based Training)という手法が広まりつつあります。これは挙上速度をセンサーで測り、目標速度を下回った時点でセットを打ち切るという考え方です。重量や回数という結果指標ではなく、動作の質という先行指標を見る。なぜなら、フォームが崩れる前に必ず速度が落ちるからです。

事業運営においても、売上や利益は明確な結果指標ですが、これらが悪化したときには、すでに組織の内部では別の何かが先に鈍化しているケースが多く見られます。私が建設業界で複数の経営者と関わる中で観察される傾向として、業績が傾く半年から一年前に、ほぼ例外なく「意思決定の所要時間」が伸びています。

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意思決定スピードという先行指標

具体的には、こうした変化です。以前は即断していた稟議に三日かかるようになる。会議で「持ち帰って検討します」が増える。新しい施策の起案から実行までのリードタイムが、気づかぬうちに二倍になっている。一つひとつは些細で、誰も問題視しません。しかしこれが、トレーニングでいう「初速の低下」に相当すると考えられます。

興味深いのは、この速度低下が起きている間、売上はむしろ堅調なことが多い点です。過去の意思決定の慣性で事業は動き続けるため、結果指標には現れない。表面上は何の問題もないように見えます。だからこそ、多くの経営者は手を打ちません。バーが上がっているうちは、フォームの乱れを軽視してしまうのと同じ構造です。

なぜKPIに組み込まれないのか

では、なぜ意思決定スピードがKPIに据えられないのでしょうか。理由は二つあると私は考えています。一つは、計測が難しいと思い込まれていること。もう一つは、速度低下の犯人が経営者自身であるケースが多く、無意識に直視を避けてしまうことです。

しかし計測自体は工夫次第で可能です。たとえば「議題が起票されてから決裁されるまでの平均日数」「新規施策の起案数と実行数の比率」「会議で結論が出ずに次回送りになった件数」。これらは特別なツールを必要としません。記録する意志があるかどうか、それだけの話です。

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事業の限界は、数字より先に動作の鈍さに現れます。今、ご自身の組織で「以前なら一日で決まっていた判断」が、何日かかっているか。一度だけ振り返ってみる価値はあるかもしれません。意思決定の速度を経営の先行指標として設計する具体的な方法については、別途noteで詳述しています。

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