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ジムでラックを譲られた瞬間に礼が出ない人が、事業承継でも信頼を失う理由

ジムで誰かが使い終えたパワーラックを「どうぞ」と譲ってくれた瞬間。そのとき、軽く頷くだけで通り過ぎる人と、目を合わせて「ありがとうございます」と即座に返す人がいます。些細な差に見えますが、私はこの一瞬の反応に、その人の協業耐性が露呈すると考えています。事業の引き継ぎ局面で信頼を失う人の挙動と、驚くほど構造が一致しているのです。

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「譲られた瞬間」とは、他者の時間に乗る場面である

ラックを譲るという行為は、譲る側が自分のインターバルやセット間の余韻を切り上げ、相手のために動線を空ける行動です。つまり譲られた側は、相手の時間を一部いただいて自分の効率を上げている構造になります。

ここで反応が鈍い人は、自分が他者の時間に乗っているという認識自体が薄いと考えられます。譲られたことを「順番が来ただけ」と処理してしまう。指導現場で観察された傾向では、この処理の癖はジム内に限らず、職場でも同じ形で表れます。

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事業の引き継ぎ局面で起きていることと、構造が同じ

事業承継、案件引き継ぎ、退職者からのナレッジ移管。これらはすべて「前任者が積み上げた時間の上に、後任が乗る」場面です。本来であれば、後任は前任の労力に対して即座に敬意を示し、感謝を言語化することで関係を整える必要があります。

ところが、信頼を失うタイプの引き継ぎ役は、受け取ったものを当然のものとして処理してしまう傾向が見られます。「資料が足りない」「説明が不十分だ」と、受け取った側の論理だけで前任を評価し始める。前任者からすれば、自分の時間が軽く扱われた感覚だけが残ります。

結果として、引き継ぎ後に必要となる追加の問い合わせや暗黙知の照会が、ことごとく断たれていきます。表面上は引き継ぎが完了しているのに、実務では情報が止まる。これが「信頼を失う」の実態です。

反応速度は、訓練可能な「協業の筋力」である

興味深いのは、この反応速度が才能ではなく、習慣で形成される筋力に近いという点です。ジムでラックを譲られた瞬間に礼が出る人は、日常のあらゆる「他者の時間に乗る場面」で同じ反応を出していると考えられます。会議で発言を譲られたとき、メールで先に返信が来たとき、紹介をいただいたとき。すべて同じ回路が作動します。

逆に言えば、ジムという利害の薄い場で訓練できるということでもあります。重量を扱うかどうかより前に、譲られた瞬間の0.5秒で反応できるかを観察してみる。私はこれを、経営者としての協業耐性を測る、最も安価で正確なテストの一つだと捉えています。

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あなたは直近一週間で、誰かに「時間を譲られた」瞬間を何度認識できたでしょうか。そして、その瞬間に何秒で反応を返したでしょうか。協業耐性は、契約書ではなく、こうした小さな反応の累積に宿るものだと私は考えています。引き継ぎや協業で躓いた経験のある方は、ぜひ一度ご自身の「反応速度」を観察してみてください。

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